藤城清治のメルヘンサロン MERUHEN-SALON

藤城清治の光と影の世界が楽しめる

藤城清治氏の作品には不思議な魅力があります。

  • 藤城清治のメルヘンサロン
  • 作品それぞれのテーマはあるものの、作品を見る人の心の中にある夢や憧れへの想い、そして、過去へのノスタルジックな幻想。決して陰鬱ではなく、その正対の『 希望 』を見出せる"やすらぎ"さえおぼえる作品の数々があります。

    メルヘンサロンでは、15メートルにわたり2300匹の魚が描かれている大作を中心に『海の世界』をテーマにした作品を多く展示しています。

    藤城清治氏は、作品を通して慈悲の愛で人々の心に" やすらぎと希望 "を与えたいと願っています。

    人々の生活と命を見つめなおしそこからあらたな希望・そして夢を見つけなおす。

    震災をうけた 宮城のこの地で一人ひとりの心に響く"小さな希望の鐘"ささやかなきっかけにこのメルヘンサロンがなることを願っております。

    入場は無料です。沢山の方々のご来場をお待ち申し上げております。

藤城清治氏プロフィール

生年月日 1924年4月17日
出身地 東京都
略歴
慶應義塾大学経済学部卒業。紫綬褒章、勲四等旭日小綬章、日本児童文芸家協会児童文化特別功労賞等受賞。自ら編み出した方法で、カミソリと数百色のカラーフィルターを操り、こびとや猫などの愛らしいモチーフから聖書や童話の世界、緻密な風景画など幅広いテーマで独特の世界を創り続けている。
「暮しの手帖」や朝日新聞などへの連載、絵本や画集など出版物のほか、「影絵名作アルバム」や天気予報、CMなどテレビにも登場。数千点に及ぶ作品は、国内の6つの常設美術館のほか、国内外各地での展覧会で多くの人に感動を与え続けている。

サロン開設までのエピソード

鐘崎と藤城清治氏との関係

鐘崎では、企業理念である「おいしさ、楽しく」を伝え、自然の恵みに感謝するために1990年に新しい文化の発信地として「鐘崎かまばこの国 笹かま館」を開設しております。

「世界や次世代に新しい文化を発信したい」

そんな鐘崎の想いを表現したサロンを作ることとなり、作品を提供いただいたのが藤城清治氏でした。影絵による幻想的な作品で海の偉大さ・やさしさを表現してもらうため、サロンの目玉として横15mの海をテーマにした影絵の大壁画の制作をお願いしました。

文:影絵作家 藤城清治

横15mの巨大影絵に挑む

横15mという壁画はもちろん、ぼくも初めてのことです。つくるなら50年、100年、200年と後世まで残るような価値のある作品を作りたいと思ったのです。それには、目先の面白さや物珍しさ、動きの仕掛けなどにあまりとらわれない方がいい、そして、壁画として自分の最高の記念碑的作品をつくりあげたかったのです。ぼくのこういった提案をすぐ受入れてくれて、何の注文もつけず、任せてくれたことを非常に感謝しています。

これだけ大きなプロジェクトを組んで進行している仕事にもかかわらず、この影絵に関してはほとんどぼくに一任してくれました。ふつうはどんな下絵か見せて欲しいといわれるものですけれど、そんなことも一度もいわれませんでした。それだけに、ぼくは自分の思うままに全力投球することができました。

スタッフ一丸、生命をかける気迫で制作

一番重要なことは、単に作業員が分担してきれいごとにつくりあげたというものではない、一人の人間を中心に生命をかけてつくったという人間の生々しい気迫、あるいは毒気こそ大事だと思ったんです。スタッフは7名で、15日間で仕上げるスケジュールを組みました。この大画面に、魚だけでも全部で約2300匹になりました。この2300匹はもちろん、網の目のように細かい珊瑚や藻も、すべて輪郭は自分一人で切り抜きました。

スタッフたちには、魚の陰影のグラデーションや色貼りをしてもらいました。このグラデーションも全部の魚につけたので、大変な作業です。それでもみんなは、毎日夜12時頃には切りあげてホテルへ帰して寝させましたが、ぼくは一人現場に残って徹夜で切り抜いていきました。ぼくは15日間でホテルに帰って寝たのは、最初の一日目と最後の一日だけでした。スタッフがあまりにも顔も手も真黒できたないというので、途中、昼間に一回だけ帰ってシャワーをあびました。ぼくは2300匹すべての魚に、一匹一匹生命を吹き込んで、祈りをこめて切り抜いたつもりです。

大作に打ち込める喜びに感涙

ぼくは毎日徹夜で一人で切りながら、なぜか涙がながれてきました。大変だからではありません。自分でもよくわかりませんが、自分の全身で感動して涙がボロボロとながれてきました。この大作に打ちこめる喜びに感激しての涙といってもいいかも知れません。誰も見ていなかったので、思い切り泣きました。

とにかく、作品は完成しました。ぼくの今日のすべての力を投入した作品だと自負しています。仙台へお出かけの折はぜひ、このミュージアムへ寄っていただきたいと思います。用がなくても、これを見るだけでも、損にはならない作品になったとおもっています。