タンパク質の語源は、ギリシャ語の「Proteios(プロティオス)」で、「最も重要なもの」という意味を表しています。
タンパク質は筋肉をはじめ体の様々な部分をつくるだけでなく、全身のほぼ全てといっても過言ではないほどの機能に関わっており、生命を維持する上で欠くことのできない栄養素です。
人体を構成するタンパク質は、10万種以上あるといわれていますが、そのタンパク質とはどういったもので、どのような役割を担っているのか?
また、どんな食材に多く含まれているのか、具体的に見ていきましょう。
タンパク質とは
タンパク質は、炭水化物や脂質と並び三大栄養素のひとつです。
体内ではエネルギー源となり、体の組織を作り、体の機能調節や恒常性維持という働きを担っています。
体内での構成比で見てみると、人間の体は約60%が水分です。
水分以外の40%の内訳は、
タンパク質が約43%、
脂質が約40%、
ミネラルが約15%、
糖質が約1%
となっています。
例えば体重60kgの人の場合は約10kgがタンパク質ということになります。
タンパク質と聞いて、まず思い浮ぶものが筋肉、という方も多いと思いますが、筋肉の80%はタンパク質でできています。
頭部においては、皮膚には「コラーゲン」、髪には「ケラチン」、目の「水晶体」、舌で味の判別をする「味覚受容体」など、外部から刺激を受け取る感覚器官もタンパク質を主な原料としたものが多くあります。
他の栄養素と比べても体への影響が大きく、体内のあらゆる組織で必要となるため、スポーツやフィットネスといった健康に関わる分野だけでなく、介護やメンタルを含む医療現場でも、その存在が重要視されています。
体に関する様々な問題を解決する多機能な物質として期待されています。
タンパク質は、ほとんどと言えるほど多種多様な人体の機能にかかわっており、タンパク質不足は様々な不調となって現れます。
タンパク質の構造の特徴
タンパク質の構成成分は、
水素・炭素・窒素・酸素・硫黄の5種類
が様々につながってできた「アミノ酸」という物質です。
自然界には約80種類のアミノ酸が存在しますが、人体の構成にかかわるアミノ酸は20種類に限られます。
そのうちの9種類は体の中でつくることができず、食品から摂取する必要がある「必須アミノ酸」と呼ばれるものです。
それらのアミノ酸は配列に一定のルールがあり、それに従い、ヒモのようにつながっています。
一般的には、その数で呼び名を区別しており、アミノ酸の数が50個以上のものを「タンパク質」、それ以下のものを「ペプチド」と呼んでいます。
体細胞の大きさが10~30μm(マイクロメートル)なのに対し、タンパク質の大きさは、数nm(ナノメートル)と小さく(およそ1/10,000)、タンパク質そのものの構造は、四次元構造と呼ばれます。
少し細かく見てみると、タンパク質の“ひも”は、らせん状やシート状などの決まったパターンがいくつか組み合わさって丸まったような立体的な形になっています。
これを三次構造と言い、らせん状、シート状の形状を二次構造といいます。
そして、二次構造を伸ばすと、一次構造であるアミノ酸のひもになるのです。
タンパク質の中にはアミノ酸が数百万個組み合わさってつながったものもあり、タンパク質の機能はその形によって大きく左右されます。
また、体内では盛んに新陳代謝がおこなわれています。
例えば、タンパク質は、体内で、分解・合成され、また新しく生産されています。
このサイクルを「ターンオーバー(代謝回転)」といいます。
ターンオーバーによってタンパク質の半分が入れ替わる期間を「半減期」といいます。
タンパク質の半減期は部位によって異なり、
消化管壁は1日、
肝臓は約10〜20日と短く、
筋肉は約半年、
骨は1年
といわれています。
このターンオーバーに関して補足すると、
ランダムに選んだタンパク質を分解酵素が分解し、一旦、アミノ酸の状態に戻します。
それらを再度、遺伝子情報に従いつなぎ直し、正しい形のタンパク質として再合成する、というものです。
しかしながら、分解したアミノ酸の全量が再合成されるわけではなく、一部はエネルギーとして利用された後、排せつされるものもあり、常に不足が発生します。
タンパク質は体内にためておくことのできない栄養素ですから、日々食品から摂取する必要があるというわけです。
タンパク質の基本的な役割、働き
タンパク質は、エネルギーとして使われたり、筋肉として内臓などの臓器を支えるほか、皮膚の構成、5,000を超える酵素の製造、免疫としての防御作用、ホルモンの原料など、その役割は多岐に渡っています。
もう少し詳しくみてみましょう。
タンパク質はエネルギー産生栄養素の一つです。
1gあたりのエネルギー生産量は、
タンパク質 4kcal、
糖質 4kcal、
脂質 9kcal
となっており、
体や脳を動かす原動力となります。
体を形作り、内臓などを支える器官の材料の多くはタンパク質です。
コラーゲンはその代表的なもので、皮膚などを構成するほか、血管壁に存在し、弾力性を保っています。
骨はコラーゲンの周囲にカルシウムが固まってできたもの。
その他にもタンパク質は靭帯や腱といった体の構造に関わっています。
筋肉もその80%がタンパク質です。
筋肉の機能として、例えば、重たいものを持ったり、走ったりする運動の働きがありますが、これは筋原線維の緊張と収縮によるものです。
その材料が「アクチン」と「ミオシン」というタンパク質でできています。
また、体内には5,000種を超える酵素があると言われていますが、酵素はタンパク質から作られています。
唾液に含まれる「アミラーゼ」、胃液の「ペプシン」などは耳にされたことがあるのではないでしょうか。
酵素の働きは多岐に渡りますが、消化や吸収、呼吸、排泄などの機能に関わっており、生命維持に欠かせない存在です。
そして、体外から侵入してきた細菌やウイルス、体内で増殖したガン細胞などに抵抗し、体の機能を守る働きを免疫といいます。
この際に起動するインターフェロンや補体の原料もタンパク質です。
異物排除に向け動き出し、体を守ります。
さらには、体の機能を調整する役割としては、「ホルモン」が担っています。
そのホルモンもまた、タンパク質からできていることはあまり知られていません。
その他にも、先に述べた受容体タンパク質や視覚で光の刺激を受け取る感覚器官、
血液中で様々な栄養素を運ぶヘモグロビンやアルブミンもタンパク質からできています。
このようにタンパク質は体内での多くの働きに関与しています。
筋肉量の低下のように、目に見える変化であれば、タンパク質不足を認識できます。
しかしながら、慢性疲労や冷え性、むくみ、風邪をひきやすくなった、などという原因の分かりにくい不調も、実はタンパク質不足の可能性があるのです。
例えば、慢性疲労なら、呼吸をすると発生する「活性酸素」という物質が体内に溜まっていることが大きな原因のひとつです。
ひょっとすると、活性酸素を抑える抗酸化力の高いペプチドを含む豚肉や鶏肉、牛肉などの摂取が不足しているのかもしれません。
また、女性に多い冷え性の原因の1つとして、熱を生み出す筋肉量の少ないことが挙げられます。
さらに、むくみは、組織の水分量と血液量のバランスを保つ、「アルブミン」というタンパク質の不足が原因の1つと考えられます。(その他、肝機能の障害の可能性もありますが。)
タンパク質を含む代表的な食材
タンパク質が豊富な食品は、カロリーが高く、脂質の含有量の多いものもあります。
普段の食事でタンパク質を増やすためには、タンパク質が豊富な食材をもう一品加えるのではなく、主菜に使う食材を高タンパク低カロリーなもので摂るよう心がけたいものです。
肉類では赤身肉がおすすめです。
牛肉や豚肉ならばロースよりヒレ肉、鶏肉ならもも肉よりささみや胸肉にすると、タンパク質を増やし、脂質を減らすことができます。
魚についてもマグロやカツオ、鯛など、赤身の部分はタンパク質が豊富で低脂質です。
イカやエビ、貝類などもタンパク質を多く含む食品ですから、シーフードミックスなどをうまく活用するといいでしょう。
肉や魚以外では、豆腐や納豆といった大豆製品、卵がおすすめです。
タンパク質の絶対量では肉や魚に及びませんが、安価であり、副菜や汁物で利用しやすいという利点があります。
毎日、十分な量を摂取しないと不足し、様々な不調が現れるタンパク質ですが、体内に溜めておくことのできない栄養素です。
成人は、1日に体重1kgあたり1gのタンパク質が必要になります。
タンパク質の代謝をサポートするビタミンB群や、筋肉や骨を強化するビタミンD、酵素の原料となる亜鉛。
さらに、各種の不調を解消する鉄などと合わせて、毎日欠かさずに食べていきたいものです。
まとめ
今はコンビニエンスストアやスーパーでも、高タンパク質のヨーグルトや調理済みのサラダチキンなど、手軽にタンパク質を補給できる食品が店頭に並ぶようになりました。
タンパク質は命を作る栄養素とも言われています。
私たちのカラダに欠かせないものです。
私たちがいつまでも健康で元気な体を維持していくためには、タンパク質の摂取はとても大切です。
寒さが本格的になるこれからの時期、体の不調や風邪を回避するためにも、調理済み食品なども上手に活用しながらタンパク質を摂り、免疫力アップを心がけていきたいものです。